Liebe


家を出て、歩くアンナについていく。
リヒトはふわふわと周りを飛び回っている。

何も言われないということは本当に見えていないのだろう。
むしろ見える基準は一体何なのだろう、とエリーはふと思った。

「街を探検したんだって?」

アンナに声を掛けられ、慌てて答える。

「は、はい」

群青色の瞳でエリーをちらっと見たアンナは柔らかく微笑んだ。
その反応に首を傾げるエリーの頭の上に、同じように首を傾げるリヒトが乗っかる。

「そんなに緊張しないで。ウィルとだってあんなに打ち解けてたじゃない」

「えっ」

思わず声が出る。
打ち解けているように見えているのだろうか。

打ち解けたいとは思っていたが、エリーは打ち解けているとは思っていなかった。
……と思うのは少し失礼だろうか。

「完全に保護者の目になってたわよ、さっき。気付いてなかった?」

アンナは面白そうにエリーを見つめながら問う。
保護者の目と言われ、エリーは街を探検した際のウィリアムの震える声を思い出した。

少しは家族のように思ってくれているということだろうか。
なんだか嬉しくなり、エリーはふわりと笑った。

「息切らしながらエリーのこと聞いてきてびっくりした、って時計屋さんのおじちゃんが言ってたわよ。それを聞いた私もびっくり」

「そうだったんですか……」

本当に申し訳なかったと眉を下げるエリーに対しアンナは楽しそうに笑う。
そしてエリーの手を握り、道の途中にあった洋服屋に入っていく。
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