Liebe
「あの、先日は」
「そんなに責任感じないで、エリーちゃん」
エリーの言葉を遮り、ダニエルは真剣な顔をする。
「そもそも君に新しい景色を見せたくて僕たちは船を選んだんだ。その君が船に乗れなかったことで、罪悪感は感じなくていいんだよ。僕たちは何度も船に乗ったことがあるしね」
エリーを安心させるようにダニエルは穏やかな声で言う。
エリーは切なそうに笑い、そしてカフェオレをもう一口。
「……でも、船が苦手とか、そういう感じではなかったよね」
「はい……。記憶が、関係しているんだと思うんですが」
そう言ってエリーは首を左右に振る。
「何一つ思い出せていません」
「そっか」
ダニエルはカップを指でなぞる。
カフェオレの良い香りが漂っている。
「まぁ、いいんじゃないかな」
「はい?」
「考えたって仕方ないよ。記憶の手がかりになるとしても、誰も無理にまた君を船に乗せようなんて思わないし、君自身が乗ろうとしたら止めると思う」
「……はい」
エリーは柔らかく微笑む。
その頭上で、リヒトが大きく何度も頷いている。
「違う話をしよう。何か聞きたいこととか、ある?」
「えっと……そうですね」
ダニエルの言葉に、エリーは考えるように視線を巡らせる。