Liebe
「……知りたいか」
やっぱり、聞いたんだ。
胸がぎゅっと苦しくなる。
できることなら、自分で思い出したかった。
自分の言葉で伝えたかった。
思い出す気配もなかったくせに、そんなことを思ってしまう。
せめて、ウィリアムにだけは。
「……わからないです」
ティーナのことを思い出す。
「レイラ様」と言って、彼女は涙を浮かべていた。
そんな彼女のことも思い出すことができない。
あまりに無力な自分に、エリーは消えてしまいたいと思ってしまう。
「……渡したいものがあるんだ」
ウィリアムが真剣な顔で言う。
エリーは顔を上げて、その顔を見る。
「……下で、待ってる」
そう言って、ウィリアムは部屋を去ってしまう。
渡したいもの。一体、何なのだろう。
エリーは深呼吸をして、立ち上がる。なんだかすごく、嫌な感覚だ。