Liebe



エリーは再び部屋に戻る。
もしかしたら、戻っているかも知れない。

そんなことを思いながら部屋の扉を開けるが、リヒトの姿はなかった。

そもそも、小さいとはいえ、妖精の習性なのか、リヒトは常にキラキラと輝いている。
探すのがこんなに難しいはずはないのだ。

そんなことを思いながら、エリーは窓の傍に寄る。
もしかしたら、街の方へ出たかも知れない。
泉へ行ったのかも知れない。

そう思ったら、外から何か、パサッと音がした。
何かが草の上に落ちたような、そんな音だ。

エリーは不思議に思い、窓を開け、外を覗き込む。
すると、窓のすぐ下にリヒトがいた。

間違いない。あの輝きはリヒトだ。

エリーは慌てて外へ出た。
窓の下へ向かうと、そこにはリヒトの倒れている姿。

「リヒト!」

声を荒げ、エリーはリヒトに駆け寄る。
リヒトは苦しそうに顔を歪ませ、汗をかいていた。

エリーは困惑したようにその様子を見る。
妖精も具合が悪くなることがあるなんて、思ってもいなかったのだ。

リヒトの輝きが、苦しそうな呼吸と共に強くなったり弱くなったりする。
リヒト自身の姿も、消えてしまいそうなくらいに透明感が増している。

エリーは不安に駆られ、リヒトを慎重に抱え、街の方へ駈け出した。

泉だ。泉へ行けば、きっと。
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