Liebe


「その旅行に私はいなかったので、詳しくは存じませんが……」

楽しそうに笑う男性に、甲板に出て遠くを眺める自分。
初めての船旅に瞳を輝かせ、一時も見逃すまいと眺め続ける。
髪を撫でる手が、温かい。

「事故に遭われたそうです。船が沈み、皆様は海に投げ出された」

手を伸ばした自分の手には、最近見たばかりの指輪。
その向こうには必死な顔で同様に手を伸ばす男性。

暗い曇り空に響くたくさんの叫び声。
呼吸が苦しい。

そうだった。
皆でプールへ行った時のことを思い出す。

――私、泳ぐの苦手なんです。


「ご両親も、ロイ様も、その……見つかったのですが、レイラ様だけが見つからなくて」

言葉を濁すように言うティーナ。
目を伏せて、その続きを聞く。

「一生懸命探したんです。そうしたら、レイラ様の背格好と同じ人を都の祭りで見たことがあると言っている方がいて……行ってみたんです。空の散歩に」

そこまで言って、ティーナは嗚咽を漏らす。
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