Liebe
第四十九話「風に乗せる想い」
ティーナに海の場所を確認し、エリーは帝都の街の中を歩いていた。
どこを見ても大きな家に広い敷地が見える。
品揃えの豊富そうな店もあっちこっちに見える。
来た時には好奇心できょろきょろと見回すばかりのエリーだったが、今はただ懐かしさを感じる。
どうして思い出せなかったのだろう。
海辺が見えてくると、予想していた通りそこにはウィリアムの姿があった。
ウィリアムもエリーが来ることをわかっていたのか、振り返っても驚いたような様子ではない。
無言で見つめ合う二人。エリーは微笑む。
「ウィリアムさん……全部、思い出しました」
「ああ。そうみたいだな」
そう言って視線を海へ移す。
エリーもまた、ウィリアムの隣に並び、海を眺める。
静かな時間が二人の間に流れる。
エリーは、何か思い出すまでウィリアムの家で世話になることになっていた。つまり。