Liebe
温まった身体を拭き、無心でアンナの用意してくれた服を着る。
先程まで寝ていた部屋のカーテンと似た、薄い水色のワンピース。
サイズは不思議とぴったりだ。新しい服というわけではなさそうだが、アンナの服とも思えない。
ふっと息を吐いて、髪の水分を拭き取った。
「あ、あの、お風呂ありがとうございました」
先程までいた部屋ではなく、アンナに言われた部屋におそるおそる入っていく。
お風呂で温めたことで喉が潤ったのか、声はもう掠れていなかった。
部屋はどうやらリビングのようだが、誰もいない。
そのリビングから繋がっている部屋から水の音がした。
キッチンと繋がっているのだろうか。ゆっくりと足を進める。
しかしそこには見知らぬ男がいた。
烏羽色の髪に、吸い込まれそうなくらい深い闇のような瞳。
「っ!」
目が合い、思わず立ち止まってしまう。
男はテーブルで珈琲を飲んでいた。
その目力に圧倒され、後ずさろうとしたところで、明るい声が響いた。
「おかえりー」
奥からやってきたアンナは、二人分のカップをのせた白いトレーを持っていた。
その明るい笑顔があまりに男と対照的で、呆然としてしまう。
その様子を見てアンナは笑う。
「カフェオレ淹れたの。よかったら飲んで」
「は、はい」
男の隣に腰掛けるアンナを見て、ぎこちない動きでその向かい側に腰掛ける。
カフェオレを一口飲むと、その温かさに心が落ち着いていくのを感じた。
そしてちらりとアンナの隣に座る男に目をやる。
一体誰なのだろう。二人はどのような関係なのだろう。