Liebe
定期的に吹く静かな風に髪をなびかせながら、エリーは自然の香りを楽しんでいた。
花の咲いている姿はないが、脳裏に鮮やかな花の姿が過ったような気がした。
「リヒト、どこまで……」
行くの、と尋ねかけたところで、空気が変わった。
得意気にエリーを見つめるリヒトの姿は目に映っていない。
エリーの目は、前にある泉に全て奪われてしまっていた。
木々に囲まれた空間にある泉。
そこには先日初めて見たはずの、リヒトのような美しく輝く羽根の生えた多くの妖精たちが、水浴びをしている姿があったのだ。
「綺麗……」
ため息が零れた。
洗脳されているかのように泉に近付き、妖精たちから少し距離を取った場所に腰掛けた。
こうして見ると、様々な大きさの妖精がいることがわかった。
リヒトのように小さな妖精もいれば、エリーよりも背の高い妖精もいた。
皆楽しそうに笑顔を浮かべながら泉で遊んでいる。
リヒトもそこに加わり、妖精たちに視線を向け、エリーを紹介するかのように振り向いた。
多くの視線が集まり、少し緊張してしまう。
エリーの姿に今気が付いたように妖精たちは愛想よく笑顔を浮かべた。
上品に微笑む妖精もいれば、無邪気に笑って手を振ってくれている妖精もいる。
エリーもそれにつられたように笑顔で軽く手を振った。