Liebe


そうしていると、そろそろ昼食の準備にとりかかる時間となっていた。
冷蔵庫に入っている食材は全てアンナが用意してくれたものだ。

日頃からウィリアムの食生活が心配なのだろう。
それもそうだとエリーは思った。
ウィリアムは放っておくと何日も食事をとらない可能性がある。そのうち倒れても不思議ではない。

そしてそんな彼は今も部屋にこもって集中している。
昼食も食べてくれるかどうか、という心配はあったが、とりあえず用意を始めることにした。

冷めても平気なものやすぐに温められるものを考えながら作っていく。
どんなに集中していてもお腹は空くだろう。
そしてお腹が空いたらさすがに何か食べ物を求めてキッチンへやってくるだろう。

食べてくれないかも知れないという考えは頭の隅に追いやって、エリーは食事を作り始めた。


ドアをノックして、声が届くように少し開ける。

「……なんだ」

いつもより低い声。
まだ慣れないな、と思いながら声をかける。

「あの、昼食を作ったので、時間のある時に召し上がってください」

ああ、という返事を聞いて、ドアを閉める。

やはり一緒に食べる気はないようだ。
思わずため息をついて、雨音を聞きながら昼食を食べる。

雨は嫌いじゃないが、どんよりとした空の色を見ているとなんだか自分の心もどんよりしてきそうだ。
ウィリアムの分の昼食をわかりやすい場所に置いておき、部屋に戻る。
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