ピーターパンに恋をして~親友の弟(大学生)と再開しまして~
「あの、さ……」
運転席に座るダイが俯いた状態で口を開くから、表情が全く見えない。
「あれ、結構傷付いたんだからな」
続けられた言葉は多分、子供の頃の会話で出てきた話の事だろう。
「ご、ごめん」
「謝られても傷付くんですけど!」
ダイが冗談っぽく返してくれるから助かった。
それでも、私達の間に沈黙は続いて、先に口を開いたのはダイの方だった。
「俺さ、就職。こっちでするから」
下を向いていた顔を上げて、痛い位に真っ直ぐと私へ向けられた視線。
「え?」
「じゃぁ、ユミの結婚式でな!」
なんてダイが口元を緩めて優しい笑顔を見せるから。
「なによ……」
ダイの車が見えなくなって、家の前で1人残された私は心にぽっかりと穴があいた様に急に寂しくなってしまった。