弟はドラゴンで
「あれ、片桐さん?」
突然後ろから、男の人の声でそう呼びかけられた。
私はパッと後ろを振り返る。
いつの間にか私たちの後ろにも、長い行列ができはじめていた。
その私の真後ろに並ぶ、男の人たちの中の1人が、私を見ている。
「やっぱり!片桐さんだ!」
茶髪が目立つ背の高いその男の人は、何やら見たことがある顔。
でも、誰だっけ?と言わんばかりの顔をし、「えーっと……」と、必死に思い出そうと黙り込んでしまった。
「やだなぁ忘れないでよ、俺隣のクラスの柳!柳 光也!体育とか合同で一緒じゃん〜」
やなぎ……みつや……
あぁ!
たしかに、そういう人いたかも!
確か、運動神経抜群の人だ。
学校の時と外にいる時の雰囲気って違うから、誰かわかんなかった……。
特に私服って、別人に見えるんだよな。
「ごめんね。なんだか学校の時と雰囲気違くて、すぐにわかんなかったよ。柳くんは、よく私ってわかったね」
「俺、人のこと覚えんの得意だからさ!」
「そーなんだ」
「……その人は、彼氏?」
私の隣にいる龍の方に目をやる柳くん。