弟はドラゴンで
異変
『好き』って、なんなのだろう。
私は、愛とか恋とか、正直そういうのに疎い。
好きな人とかできたことないし、もちろん付き合ったこともない。
カップルとか見ると、普通の友達関係とは違うのはわかるけど……なんていうか、どういう気持ちが『好き』なのかが、よくわからない。
柳くんは私のこと、どういう気持ちで『好き』って言ってくれたのかな。
「なぁ〜にぃ〜、ぼーっとしちゃって」
凛の声で、ハッと我に返る。
「え、あ、いや…………。ね、ねぇ凛?」
「ん?」
凛なら、こういう恋愛系得意だよね。
「あの、さ……恋愛でいう『好き』って、どういうことなのかな?」
「…………ど、どうしたの!?唯がそんなこと聞いてくるなんて……珍しい!何かあった!?」
「い、いや、なんとなく!なんとなく……気になった、だけ……」
だよね。
私がこんなこと聞くの……不自然だよね。
今までそういう話、全然興味示さなかったんだもん。
疑問に思われても仕方ない……。
「…………へぇ〜。うーん、“特別”みたいな?」
「……とく……べつ。」
「うんうん。
例えばさ、何かいいことあったら、一番に報告したい!って思える人とか。
悲しいことがあったら、一番にそばにいて欲しい!って思う人とか。
なんでも、『いちばん』な人のことを、言うんじゃないかな?」
「なんでも……いちばん……」
「一緒にいるだけで何をしても楽しくて、幸せで、その人の心の支えでありたいって思えて。自分の一番でもあって、自分も相手の一番でありたいって感じ?」
“特別”……。
“一番”……。
「それって、友達への『好き』とはまた違うの?」
「そうねぇ、じゃあさ。唯は、私のこと好き?」
「え?うん、好きだよ」
「あはっ、私も大好き!でも、私と一緒にいてドキドキしたり、ひとつひとつの行動に、いちいち意識したりしないでしょ?例えば、こぉ〜やってくっついても、普通でしょ?」
凛が、そう言って私の隣に来て腕を組んできた。
かなり身体は密着してるけど、確かに凛に変な意識が行ったりしない。
女同士だからっていうのもあるんだろうけど。
まぁ、うん、普通だな。
「普通だね」
「でしょ?でもこれが異性だと違うんだな。
それも、好きな人だともっとね。
息苦しくって、心臓の音が相手に聞こえるんじゃないかとか、
ドキドキしてるのが顔に出てるんじゃないかとか、
いろいろ考えちゃうの。
そして、相手に意識しまくってしまう。
好きじゃない相手だったら、
そんなにくっつかれると落ち着かないし、
とにかくいい気分じゃない。
むしろ気持ち悪いってやつね!
私たちにはね、相手に近づかれてもいい空間ってのが決まってるの。
つまり、“見えない領域”があるってこと。
その“領域”に土足で踏み込んでくる人を、不快に思ってしまうの。
近づかれすぎると、良く思わないって感じ。
でも、人によってその“領域”の広さは違う。
“特別な人”なら、その“領域”に入られても不思議と不快に思わないのよね。
だから、そういうのも全部ひっくるめて、好きな人だけは許せちゃうって感じのこと……
って、私は思うのよねん♪」
ふ………………深い!!