弟はドラゴンで
誘拐
柳くんから告白されて数日が経った今日。
私は、ちゃんと柳くんに返事をすることにした。
昨日の龍の傷を見て、色々考えてたら全然寝れなかったから、ちゃんと頭まわるかな……。
休み時間に柳くんの教室に行くと、柳くんがこちらに気づいて出てきてくれた。
その時、柳くんの顔に絆創膏が貼られていて、他にも何ヶ所か傷がついていたのが目立った。
「柳くん、顔どうしたの!?」
「えっ……あぁ、これ。昨日ちょっと階段から落ちちゃってさ。どんくさいよな」
つい顔の傷を見て反応してしまった私に対して、「ははっ」と笑ってそう返す柳くん。
「え、えっ?大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!骨とか折れてるわけじゃないし!」
なんて柳くんは笑うけど、私はその傷を見て笑えなかった。
結構な傷跡だし……。
「なんか用事あるんでしょ?どしたの?」
柳くんは、気を利かせて話を変え、私にそう尋ねてくれた。
傷のことを気にしながらも、とりあえず放課後に話したいということを言って、放課後に会う約束をした。
龍といい柳くんといい、私の周りには傷だらけの人が多いな……。
教室に帰ってから、いつも一緒に帰っている凛には放課後のことを説明して、先に帰ってもらうことにした。
約束の放課後。
私は、柳くんの教室に行く。
「ごめんね、来てもらっちゃって。裏庭行かない?」
柳くんは、人があまり来なさそうなところを提案し、私もそれに賛成した。
ふと柳くんの腕を見ると、痛々しく傷がついていて、階段から落ちてこんなに切れるものなのかと一瞬考えてしまった。
裏庭への道のりが、なんだか長く感じる。
そして、私は思った。
……告白を断るっていうのは、きっと、柳くんを傷つけることに繋がるんだろうな。
そうは思っても、私の答えは変わらないんだ。
柳くんは今、どんな気持ちなんだろう。
頭の中を悶々とさせていると、いつの間にか裏庭に着いていた。
柳くんは私と向き合う位置に立つと、先に口を開いた。
「返事、だよね?」
「あ、うん……」
少しの沈黙のあと、私は息を吸うのと同時に口を開いた。
「ごめんなさい。私、柳くんと、付き合えない……です。」
「……そっか。」
「私なりに、ちゃんと考えた結果……だから。でも、ありがとう。「好き」って言ってくれて。」
柳くんになんて言うか決めていた言葉。
ちゃんと言えて、正直ホッとした。
下を向いていて、柳くんの表情がわからない。
どんな顔……してるんだろう。
「うん、ダメだと思ってた」
柳くんの、吹っ切れたような声が聞こえた。
その声と言葉で、私はパッと顔を上げる。
「こっちこそごめんね、迷惑かけちゃって。」
優しく笑みを見せる柳くん。
「そんな、迷惑だなんて……」
「片桐さんには、龍くんがいるもんね」
「えっ?」
「龍くんと、いい感じなんでしょ?」
「い、いやいやいや、龍は弟だし、そんなんじゃないよ!」
「でも、「弟」って言っても血繋がってないんだよね?そういう関係になっても、問題ないと思うけどな〜。パンケーキ屋で会った時とか、普通にカップルに見えたしね」
「な、何言ってるの……まぁ年も近いし、そう見えてもおかしくはないけど……」
「龍くんは、片桐さんのこと好きだと思うよ?」
「へっ!?そ、それはないから!仲がいいだけでっ」
「え〜龍くん可哀想。龍くん見てたら片桐さんのことすごい好きなんだなーって伝わってくるよ〜」
……柳くん、気まずくならないようにしてくれてるのかな。
こうやって冗談言ってくれるなんて……。