弟はドラゴンで
噂
夏休みがもう少しでやってくる。
暑さも増してきて、外ではセミも鳴きはじめていた。
そんなある日のこと。
「ねぇねぇ唯!変な噂知ってる!?」
唐突に聞いてきたのは、親友の凛。
学校で昼休みを凛と一緒に過ごしていた時のことだった。
凛は天然で可愛くて、いわゆる愛されキャラ。
しかも、いろんな情報の持ち主で、だいたい凛に聞けば学校のことはお手のもの。
学校の中のことなら、こと細かく知っている。
つまり、学校の中で流れている「噂」なども、よく知っているのだ。
どこでそんな噂やら他のことやら、聞き入れてくるんだか……。
そんな凛に、私は首をかしげて聞き返す。
「うわさ?」
「そう!私も最近聞いたんだけどね!この街、なんと!!おっそろしいバケモンが出るらしいよ〜!!」
「おっそろしい……バケモン?」
「そ!バケモン!」
「…………」
凛の発言で、しばらく私たちの間で沈黙の時間が流れる。
私は正直、「なに言ってんだ?」と思った。
「ちょっと!なんで反応ないわけ!?」
「いやいやいや、急にそんなこと言われても……反応しようにもできません。」
「ん〜まぁ……そうか!でもでも!ちゃんと続きがあるのよ!」
「う、うん」
凛が続ける。
「その“バケモン”ってのをね、見た人が何人もいるらしいんだ!しかもその“バケモン”、人間を襲うらしいの!」
「……へぇ?」
「あ!全く信じてない!」
「ん〜、なんか想像できない……」
私がまた首をかしげて言うと、凛の口から、信じられない情報が放たれた。
「あぁ!なんかね、翼が生えてるらしいよ。でも、見た目は人間とは変わりないんだって。」
「……え?」
……つば……さ?
見た目は、人間……?
それって……なんだか龍の感じと似てる……?