小説請負人Hisae
3「アーティスト」
今年も桜が咲いて綺麗、桜と云えば花見酒、てかっ!桜餅食いてえ~、桜餅と酒買ってこよっと。
Hisaeは餅を口に入れながらPCを開いた。
一通のメールが来た。
なになに?
「初めまして。私は五十五歳を迎えたばかりのどこにでもいる、いたって普通の主婦で山口美和と申します。
Hisaeさんの仕事に興味を持ち主人と相談し、早速メール致しました。私と主人の光晴は、若い頃音楽を生業として食べることを夢見る二人でした。
YAMAPAミュージックコンテスト地区大会で優勝しましたが、県大会では落選してしまいました。
以後ストリートミュージシャンを数年やって子供が出来たのを期に、普通のサラリーマンとして生きてきました。
ごく普通の何処にでもいる音楽に憧れ挫折したというパターンの夫婦です。
せめて小説の中だけでも私達を、シンガーソングライターを生業とするミュージシャンとして描いて頂きたくメールいたしました」
Hisaeは返信した。
「ご依頼いただきありがとうございました。この依頼、受けさせていただきたいと思います。つきましては、小説をリアルなものにしたいので、お二人で作った曲名と曲風。 書き表したい想い出に残るエピソードなどをお聞かせ下さい。
まずは、あらすじを書いてみますのでご確認ください」
あらすじ
これは、自分達の創作した音楽が、多くの日本人の心に、安らぎと感動を与えた、男女ユニットミュージシャンの物語。
昭和四八年。多数の有名人を世に送り出した、YAMAPAミュージックコンテスト。
地方予選を勝ち抜いてきた男女二人のミュージシャンが全国大会で見事グランプリを獲得し、日本音楽業界に数々の功績を残したしたミュージシャン夫婦の物語。
そのミュージシャンの名はMitu&Miwaそうこれは日本の音楽業界に多大な影響を与えたMitu&Miwaの半生を描いた作品。
学生時代から夢見た音楽家への道。
順調満帆にみえる2人であったが他人に言えない挫折そして再起。心の葛藤と歓喜。そんなMitu&Miwaの物語。
昭和45年。2人は同じ中学の同級生。
隣町のレコード店で同じジャンルのレコードをMituとMiwaは偶然探していた。隣の女の子の顔を見てMituはビックリした。
「おや、Miwaどうしたの?」
「私、井上陽水が好きなの、でレコード見てたの、Mitu君は?」
「僕は、岡林信康」
そんな話から2人は意気投合した。そこからMitu&Miwaの物語が始まった。
これでどうかな?と。
Hisaeは山口美和にメールした。
「ありがとうございます。あらすじだけでも何だかワクワクします。そのまま執筆をお願いいたします。 山口」
もう一度Hisaeは質問した。「了承いたしました。こちらからの質問ですが、お2人の作った曲名と歌詞を差し支えなければ数曲教えていただければ、作品によりリアル感が生まれますが。
あと書いてほしい事柄やエピソードがあったら教えて下さい。 Hisae」
「曲名は、『笹舟・SANGA・絆』の3曲です。歌詞はどこにでもある内容です。恥ずかしいので勘弁して下さいませ。
山口」
「Mitu & Miwa」
昭和45年、Mitu13歳 。フォークギターを抱えて札幌市の玉屋レコード店でレコードを物色していた。お気に入りは岡林信康。彼は日本フォーク界のパイオニア的存在。
Mituがアルバムを見ていたら、隣の女性に肘が触れてしまった。
「あっ、すみません」
「いえ」顔を上げたその先には同じクラスの女の子、Miwaの姿があった。お互いビックリして顔を見合わせた。
「Mituくん、どうしたのこんなとこで?」
「どうしたって、レコード見てるんだけど、Miwaこそフォークソング聞くんだ?」
「私、井上陽水が好きなのよ、でレコード見てたの、Mituくんは?」
「僕は、岡林信康」
「岡林もいいよね。私も手紙やチューリップのアップリケが好き、関西フォークって、語りも面白いし。ライブバージョンなんて最高よね!」
「僕も陽水は聞くよ。今までのフォーク歌手にない透き通った歌声とメロディーラインが好きだよ」
「Mituくん、これから用事あるの?」
「別にないけど」
「よかったら、ウエシマの喫茶店でコーヒー飲まない?」
「いいね、フォークの話しようか?」
二人は向き合って座った。
「私、嬉しい。私達の年代ってみん、郷ひろみ・秀樹・五郎の御三家でしょ。どこか感覚が合わないのよね」
「同感。男も小柳ルミ子や南さおりだとかだから、可愛いけど、歌の方向性がいまいち合わないよ。まあ南さおりは僕的には大好物なんだけどね!」
Miwaはメロンソーダを吹き出した。
「Mituくん、面白い、ところでMituくん、そのギター弾いて歌ってるの?」
「ああ、親にねだって買ってもらったばかりなんだ。コードは一通り憶えたよ少しぎこちないけどね」
「私も同じ。ハイコードがいまいちぎこちないの」
「ハハハハ」
2人はすっかり意気投合した。
「今度、ギター持って家においでよ。アルペジオ教えてくれない?」
「良いけど、僕も練習中だから教えるまでいってないよ」
「いいの、二人でギターの練習しようよ」
二時間程話してから店を出て別れた。
数日後、MituはMiwaの家にいた。
「ここにあるレコード見ていい?」
「お好きにどうぞ」
「へ~。ロックも聴くんだね」
「うん、最初はボブディランだとか洋楽だったのね。でも歌詞が解らないから、だんだん日本のフォークに入れ込んだの」
「解る。僕もそう思ってた。 やっぱりダイレクトで歌詞も味わいたいよね。 英語の字面や・発音だけじゃあ、いまいちだよ。ツェッペリンの天国の階段や・ELP・サイモンとガーファンクルやボブディランなんて特にそう思うんだ」
「Mituくんは感性まで私と似てる、うけるんだけど!」
「本当だね。岡林も良いけど五つの赤い風船も好きなんだよねぇ」
突然Miwaが「今度、私と曲を作ってみない? 私が作詞するからMituくんが作曲ってのはどう?」
「オリジナル・・?」Mituの目が光った。
「うん、いいかもしれないね。僕、作ってみるよ」
「楽しそう、オリジナルなんて考えてもみなかったもん」
Miwaも心が弾んだ。
「アップテンポの曲とバラード調の曲をふたつ作るね」
「うん、ところでどっち先に作るの、詞? 曲?」
「できれば作詞を先にしてほしいな。その詩をイメージして曲作りをしたいんだけど」
「わかった。その代わり、絶対笑わないって約束してほしい、いい?」
「了解。できあがったら学校で渡してくれる? なんか楽しみだな~」
「私もなんか緊張してきた……」
二人は、同じ趣味を語り合える人間と出会った喜びに感動した。
数日後の放課後MiwaはMituに封筒を恥ずかしそうに渡した。
「これ宜しく……」
「ああ、お疲れ…」受け取ったMituもすこし照れていた。
足早に帰宅したMituは部屋に入り封筒を開けた。レポート用紙二枚が入っていた。女の子らしい丸い文字が印象的。
「どれどれ?笹舟とSANGA」
Hisaeは手を止めた。今日はこの辺で勘弁してやる。アタシはもう寝る!ベッドの上で瞑想に入った。
瞑想はHisaeの日課。急にある思いが沸上がってきた。
私が簡単な作詞をするか……それともメールで問い合わせして実際の詞を組み入れるか?
とりあえず本人にメールしてから寝ようっと。メールをしてから寝た。
「Hisaeです。小説は順調に進んでおります。 これから歌詩りに入ります。実際の笹舟はバラード調でSANGAはUPテンポでよかったでしょうか?
それと作詞は実際のものをリアルに使った方がよいのか?
架空の作詞にした方がよいのか? その場合『私が勝手に作ります』その辺を確認してほしいと思います」
翌朝PCの電源を入れるとMiwaからメールがあった。
「お気使い、ありがとうございます。メールの件ですが、私が書いた詩を添付いたします。とっても恥ずかしいです。でも、折角の小説、恥を忍んで送ります。 Miwa」
今年も桜が咲いて綺麗、桜と云えば花見酒、てかっ!桜餅食いてえ~、桜餅と酒買ってこよっと。
Hisaeは餅を口に入れながらPCを開いた。
一通のメールが来た。
なになに?
「初めまして。私は五十五歳を迎えたばかりのどこにでもいる、いたって普通の主婦で山口美和と申します。
Hisaeさんの仕事に興味を持ち主人と相談し、早速メール致しました。私と主人の光晴は、若い頃音楽を生業として食べることを夢見る二人でした。
YAMAPAミュージックコンテスト地区大会で優勝しましたが、県大会では落選してしまいました。
以後ストリートミュージシャンを数年やって子供が出来たのを期に、普通のサラリーマンとして生きてきました。
ごく普通の何処にでもいる音楽に憧れ挫折したというパターンの夫婦です。
せめて小説の中だけでも私達を、シンガーソングライターを生業とするミュージシャンとして描いて頂きたくメールいたしました」
Hisaeは返信した。
「ご依頼いただきありがとうございました。この依頼、受けさせていただきたいと思います。つきましては、小説をリアルなものにしたいので、お二人で作った曲名と曲風。 書き表したい想い出に残るエピソードなどをお聞かせ下さい。
まずは、あらすじを書いてみますのでご確認ください」
あらすじ
これは、自分達の創作した音楽が、多くの日本人の心に、安らぎと感動を与えた、男女ユニットミュージシャンの物語。
昭和四八年。多数の有名人を世に送り出した、YAMAPAミュージックコンテスト。
地方予選を勝ち抜いてきた男女二人のミュージシャンが全国大会で見事グランプリを獲得し、日本音楽業界に数々の功績を残したしたミュージシャン夫婦の物語。
そのミュージシャンの名はMitu&Miwaそうこれは日本の音楽業界に多大な影響を与えたMitu&Miwaの半生を描いた作品。
学生時代から夢見た音楽家への道。
順調満帆にみえる2人であったが他人に言えない挫折そして再起。心の葛藤と歓喜。そんなMitu&Miwaの物語。
昭和45年。2人は同じ中学の同級生。
隣町のレコード店で同じジャンルのレコードをMituとMiwaは偶然探していた。隣の女の子の顔を見てMituはビックリした。
「おや、Miwaどうしたの?」
「私、井上陽水が好きなの、でレコード見てたの、Mitu君は?」
「僕は、岡林信康」
そんな話から2人は意気投合した。そこからMitu&Miwaの物語が始まった。
これでどうかな?と。
Hisaeは山口美和にメールした。
「ありがとうございます。あらすじだけでも何だかワクワクします。そのまま執筆をお願いいたします。 山口」
もう一度Hisaeは質問した。「了承いたしました。こちらからの質問ですが、お2人の作った曲名と歌詞を差し支えなければ数曲教えていただければ、作品によりリアル感が生まれますが。
あと書いてほしい事柄やエピソードがあったら教えて下さい。 Hisae」
「曲名は、『笹舟・SANGA・絆』の3曲です。歌詞はどこにでもある内容です。恥ずかしいので勘弁して下さいませ。
山口」
「Mitu & Miwa」
昭和45年、Mitu13歳 。フォークギターを抱えて札幌市の玉屋レコード店でレコードを物色していた。お気に入りは岡林信康。彼は日本フォーク界のパイオニア的存在。
Mituがアルバムを見ていたら、隣の女性に肘が触れてしまった。
「あっ、すみません」
「いえ」顔を上げたその先には同じクラスの女の子、Miwaの姿があった。お互いビックリして顔を見合わせた。
「Mituくん、どうしたのこんなとこで?」
「どうしたって、レコード見てるんだけど、Miwaこそフォークソング聞くんだ?」
「私、井上陽水が好きなのよ、でレコード見てたの、Mituくんは?」
「僕は、岡林信康」
「岡林もいいよね。私も手紙やチューリップのアップリケが好き、関西フォークって、語りも面白いし。ライブバージョンなんて最高よね!」
「僕も陽水は聞くよ。今までのフォーク歌手にない透き通った歌声とメロディーラインが好きだよ」
「Mituくん、これから用事あるの?」
「別にないけど」
「よかったら、ウエシマの喫茶店でコーヒー飲まない?」
「いいね、フォークの話しようか?」
二人は向き合って座った。
「私、嬉しい。私達の年代ってみん、郷ひろみ・秀樹・五郎の御三家でしょ。どこか感覚が合わないのよね」
「同感。男も小柳ルミ子や南さおりだとかだから、可愛いけど、歌の方向性がいまいち合わないよ。まあ南さおりは僕的には大好物なんだけどね!」
Miwaはメロンソーダを吹き出した。
「Mituくん、面白い、ところでMituくん、そのギター弾いて歌ってるの?」
「ああ、親にねだって買ってもらったばかりなんだ。コードは一通り憶えたよ少しぎこちないけどね」
「私も同じ。ハイコードがいまいちぎこちないの」
「ハハハハ」
2人はすっかり意気投合した。
「今度、ギター持って家においでよ。アルペジオ教えてくれない?」
「良いけど、僕も練習中だから教えるまでいってないよ」
「いいの、二人でギターの練習しようよ」
二時間程話してから店を出て別れた。
数日後、MituはMiwaの家にいた。
「ここにあるレコード見ていい?」
「お好きにどうぞ」
「へ~。ロックも聴くんだね」
「うん、最初はボブディランだとか洋楽だったのね。でも歌詞が解らないから、だんだん日本のフォークに入れ込んだの」
「解る。僕もそう思ってた。 やっぱりダイレクトで歌詞も味わいたいよね。 英語の字面や・発音だけじゃあ、いまいちだよ。ツェッペリンの天国の階段や・ELP・サイモンとガーファンクルやボブディランなんて特にそう思うんだ」
「Mituくんは感性まで私と似てる、うけるんだけど!」
「本当だね。岡林も良いけど五つの赤い風船も好きなんだよねぇ」
突然Miwaが「今度、私と曲を作ってみない? 私が作詞するからMituくんが作曲ってのはどう?」
「オリジナル・・?」Mituの目が光った。
「うん、いいかもしれないね。僕、作ってみるよ」
「楽しそう、オリジナルなんて考えてもみなかったもん」
Miwaも心が弾んだ。
「アップテンポの曲とバラード調の曲をふたつ作るね」
「うん、ところでどっち先に作るの、詞? 曲?」
「できれば作詞を先にしてほしいな。その詩をイメージして曲作りをしたいんだけど」
「わかった。その代わり、絶対笑わないって約束してほしい、いい?」
「了解。できあがったら学校で渡してくれる? なんか楽しみだな~」
「私もなんか緊張してきた……」
二人は、同じ趣味を語り合える人間と出会った喜びに感動した。
数日後の放課後MiwaはMituに封筒を恥ずかしそうに渡した。
「これ宜しく……」
「ああ、お疲れ…」受け取ったMituもすこし照れていた。
足早に帰宅したMituは部屋に入り封筒を開けた。レポート用紙二枚が入っていた。女の子らしい丸い文字が印象的。
「どれどれ?笹舟とSANGA」
Hisaeは手を止めた。今日はこの辺で勘弁してやる。アタシはもう寝る!ベッドの上で瞑想に入った。
瞑想はHisaeの日課。急にある思いが沸上がってきた。
私が簡単な作詞をするか……それともメールで問い合わせして実際の詞を組み入れるか?
とりあえず本人にメールしてから寝ようっと。メールをしてから寝た。
「Hisaeです。小説は順調に進んでおります。 これから歌詩りに入ります。実際の笹舟はバラード調でSANGAはUPテンポでよかったでしょうか?
それと作詞は実際のものをリアルに使った方がよいのか?
架空の作詞にした方がよいのか? その場合『私が勝手に作ります』その辺を確認してほしいと思います」
翌朝PCの電源を入れるとMiwaからメールがあった。
「お気使い、ありがとうございます。メールの件ですが、私が書いた詩を添付いたします。とっても恥ずかしいです。でも、折角の小説、恥を忍んで送ります。 Miwa」