小説請負人Hisae
4「妖精ミミ」

「最近、暇よね・・・ここのとこ仕事の依頼が無いのよね?この美貌だしホステスでもしようかな……」

そう、最近は仕事の依頼が入っていない。

ぼ~と宙を眺めていた時だった。クローゼットの下に何やら影が動いた。ネズミ?まさかね…あっ?ゲゲッ……
手のひら大の子人さんと思われる姿があった。

ゲゲッ、ゲゲッ!妖精?Hisaeは言葉を失った。その人影はHisaeに軽くお辞儀をして話かけてきた。 

「こんにちは…」

Hisaeも恐る恐る「こんにちは…あんた誰?」

「ミミ」

「ミミちゃん?私はHisaeだけど…」

「ワタシHisaeさん知ってます」

「あっそう、なんで?そしてなしてここにいるの?」

「私にも小説書いてもらえますか?」

「小説?書けるけどあんた小さいのに本を手で持って読めるの?」単純な質問であった。

「Hisaeさんが読んで下さいナ」

「良いけど、ミミちゃんはお金持ってるの?」

「これじゃあ駄目ナ?」

ミミは小さな手を差し出した。手の中にあったのは透明な石。

「何にこれ?」

「この石は不思議な石なのナ」

「どう不思議なの?」

「これを持ってると動物と話が出来るナ」

「嘘でしょ…マジ?」

「じゃあこれを持ってベランダに出てみるナ。意識を鳥に集中させるナ。やってみてナ」

Hisaeは云われたとおり、ベランダに出て試すことにした。電線に止まっている数羽のスズメに意識を向けた。

「今日は暑いね」

「今日、もっと暑くなる」

「夕方はハヤブサに気をつけなさいよ」

「解った母さん」

解る、スズメが会話してる。

ミミのほうを振り返り「こんな大事なものもらえないわよ」

「いいです。私は無くても話が出来るナ」

「そう…で、どんな小説書いて欲しいの?……その前にあんた餅食べる?」

「はい、Hisaeさんドングリ食べるナ?」

「ドングリいらねぇ」

「さっき採ってきた新鮮なドングリですナ」

「だからいらねぇし」

「綺麗になりますよ」

「?……本当に、どれ、ひとつちょうだい」

「どうぞ」ミミは差し出した。

「しぶッ」

「で、ミミさんはどんな小説書いてほしいの?」

「で、へ、へ、へ、へ」

「なに!気持ちわる」

「私は北キツネのヤーが好きなんです。でも、立場が違うからってミルキー婆さんが反対するんだ。 私はしきたりに反対できないから、せめて小説だけでもいいから夫婦になりたナ……」

「そっか…でも 、夫婦になって子供が出来てそれでどうするのよ?」

「とにかく一緒に居たいの・・・」

「一緒にいればいいじゃない・別に結婚しなくてもいいジャン」

「うっ…うううっ……」ミミは泣きそうになった。

「泣くな!」

「ハイ」

すぐ泣きやんだ「はやっ……」

Hisaeが呆れたように「まあ小説考えるけどこの石は普通にそこら辺に落ちてるのかい?」

「これはミミの先祖から伝わるお宝!らしいナ」

「そんな大事なもの持ち出して、私にくれて良いのかい?」

「だってみんな動物と話が出来るから必要ないもん」

「必要ないってさあ……家宝でしょが?」

「ミミはヤーのほうが宝」

Hisaeは内心「めんどうくせ~」と思った。

「解った。じゃあ私の話し聞いてくれる? まず、その石は受け取れません。大事に持って帰って元の所に置いてください。無料で小説書きますから」

「それと、ミミちゃんがキツネになるの?キツネが妖精になるの?どっちがいい?」

「何それ?……ナ」

Hisaeは怒りを抑えた「キツネと妖精は違うでしょ?キツネはこの位の大きさでミミちゃんはこの位でしょ?」

「違うのら、意識だけだから身体関係ないのら」

「あのねぇ、結婚というのは一心同体といって、お互いの心と体がひとつになるという事なの。それが人間世界でいう結婚なのね」

ミミが下を向いて「ミミは身体無いから」

「じゃあ聞いていい?ミミちゃんの結婚ってどういう事なの?」

「……?」

「もう一度考えてからきなね。いつでも書いてあげるから」

「わたし何でここに来たんだろうナ?」ミミは突然消えた。

「今のなに?……寝る」


END
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