364日の嘘と、たった1日の真実
次に目が覚めたとき最初に目に入ったのは白。
白い天井、白い壁、白いシーツ…
…ここはどこだろう?
…翔は無事?あれからどのくらい経った?
死んじゃってたり…しないよね?
もしも…もしも、翔に二度と会えないなら…私は…
「まぁ!ひかりちゃん!」
「…おばあちゃん?」
「そうよ!あぁ…よかった…ひかりちゃんが救急車で運ばれたって聞いて…もう…心配したんだからね?」
「ごめんなさい…」
「ほら、お腹すいてない?よかった…あなたは無事で…」
ねぇ、おばあちゃん…どうしてそんなに取り繕った笑顔なの?
私"は"無事でよかったってどういうこと…?
「…おばあちゃん…翔は…?」
「え?」
「翔……私を庇ったから…私よりひどい怪我してたの…翔はどこ?」
「あ、あのね、ひかりちゃん…落ち着いて聞いてね?翔くんはね、意識不明なんですって。脳の損傷がひどくて…もう二度と目覚めないそうよ…」
脳の損傷がひどい…?
…もう二度と…目覚めない…?
翔が?
指先が、胸が、スッと冷えた気がした。
世界が…凍りついていく。
古びた写真のように色褪せて、水の向こうの景色みたいに歪んで、そして全ての音が遠のいた。
「翔は…死んじゃったの?」
「っ…植物状態なだけよ…まだ、あの子は生きてるわ」
しょくぶつじょうたい
その言葉の意味が一瞬分からなかった。
植物状態…身体に死が訪れるまで、翔の意識はずっと闇の中に閉じ込められたままだ。