恋は、秘密主義につき。
結論から言うと、こういうことなんでしょうか。
征士君は私の許嫁としてこの10年間たゆまぬ努力をし、そして迎えに来た、・・・と。
一方の私は綺麗サッパリそれを忘れて、いつか、お祖父さまが探してくれた人と結婚するんだろうなぁ・・・ぐらいに呑気にしていた、と?

道理で、再会に温度差があったわけです。彼はきっと万感の思いを胸に今日、私に会いに来てくれたんでしょうから。

征士君の屈託のなさそうな笑顔に、ものすごく罪悪感を感じて申し訳なさが募った。
この数時間だけで、全てが分かったわけではないけれど。少なくても、単なる政略結婚目当ての空気は感じ取れなかった。
実は俳優さんで演技力抜群だったりしたら、今すぐアカデミー賞に抜擢されてもおかしくないほどだと、アイスコーヒーのストローに口を付けた彼を観察する。

見た目も好くて、性格も捻じれて無さそうな、今どきの言い方をすれば『優良物件』?
・・・・・・さて、どうしましょう。
視線に気が付けば、どこか照れくさそうに淡く笑み返してくれた征士君との、結婚を。




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