恋は、秘密主義につき。
それから一実ちゃんは。お休みの明日は征士君へのプレゼント選びに付き合ってくれるとチャーミングな笑顔で、約束もくれました。


飲食店が集まったビルの3階だったお店を出たのは9時半過ぎ。3時間以上も、二人でお喋りに夢中になっていた計算です。

小さなエレベーターで下まで降り、一実ちゃんと電車の時間を気にしながら、建物の出口の方に自然と目が行った時。
そこに、スマートフォンを手に壁に寄りかかって気怠そうに立つ、黒いシャツの見覚えのありすぎる姿があって。思わず足が止まる。
先に行きかけた一実ちゃんが怪訝そうに振り返った。

「どうしたの?、美玲」

「えぇと、その、お迎え?・・・が来てるみたいで」

どう説明しようかと思考回路を奮い立たせつつ、ぎこちなく笑む私。
疑問形のイントネーションに、眉を寄せる一実ちゃん。

「お迎え?」

見た目は女の子でも、身長は私より13センチ高くて168センチほどありますし、どことなく迫力を感じます。

私達に気が付いた佐瀬さんは視線を傾け、億劫そうに壁から上体を起こすとゆっくりとこっちに向かってくる。

「・・・終わったか?」

欠伸を噛み殺したみたいな、退屈そうな顔。もしかして、ずっと待っていたのかと急いで謝った。

「すみません、お待たせしちゃったみたいで・・・っ」
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