恋は、秘密主義につき。
「アイツをシスコン呼ばわりとはねぇ。オレとは気が合いそうだな」

肩を揺らして可笑しそうに笑う彼を。
私は呆然と見つめる。
ああ。こんな風にも笑えるんですね・・・。

初めて見た笑い顔。・・・私の前では見せてくれたことのなかった顔。
それが。すごく胸に突き刺さって。何かで抉られたみたいに苦しくなった。
ぎゅっと締め付けられるような痛みを必死に押し隠して。装う。

「友達って言うから同類かと思ったんだけど、違うんだ?」

「カンベンしてくれ。オレは、保科よりはマトモな人間だっつの」

軽い口調の一実ちゃんに気安く答えている佐瀬さんは、素に見えて。
自分にはどこか線を引かれているようで。・・・訳もなく泣きたくなった。
私を他所に二人は、前からの知り合いみたいに会話を弾ませていく。

「なら、いーけど。美玲の周りってアブナイのばっかだから、お兄サンも気を付けてやってね」

「・・・お宅は違うって?」

「女装(コレ)は、あたしのポリシーなの。美玲は大事な大事な、親友。それだけよ?」

「ふーん・・・。まあ、オレの手の届かないトコは任せとくから、ヨロシク。騎士(ナイト)のお姫さん?」

「あらぁ? よく見れば割りとタイプかもー。付き合ってみる?」

冗談めかして笑う一実ちゃん。

「そーだねぇ。カワイイから、イケるかもな」

人が悪そうに、妖しく目を細めた佐瀬さんを見た瞬間。
ナニカガ。


振り切れた。・・・音がどこかで。した。
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