恋は、秘密主義につき。
「・・・送る」
ぼそっとした低い声が聴こえ、佐瀬さんが踵を返して歩き出した。
私は返す言葉すら浮かばずに、黙って後ろを追いかける。
一歩ずつ。かかとを踏み出すごとに、徐々に頭の中が冷えてくると。比例して、どんどん気持ちが奈落の底へと落ちていく。
あんな。子供の駄々を聴かされて。・・・呆れない人間がいるでしょうか。
幼稚園児が大好きな先生にかまってもらえなくて、拗ねて困らせたようなものです。22歳の大人の所業とは思えない愚行です。もういっそ、穴を掘って二度と地上には顔を出さない方がいいに決まってます・・・・・・。
情けないやら自分を赦せないやら、自己嫌悪でまた泣きたくなった。
鼻の奥がつんとするのを必死に堪え、俯き加減にきゅっと唇を引き結ぶ。
出来るものなら、放っておいて欲しかった。
どんなに頑張っても何も無かったようには笑えないし、佐瀬さんに居心地の悪い思いをさせたくもない。今すぐに回れ右をして、駅に向かって走り出したい衝動を、寸でのところで思い留まっているのだから。
それでも。私の身辺警護で報酬を得るのが、彼の仕事。妨げる真似だけはしたくない。その一心で鉛よりも重たい心と躰を引き摺り、機械のように足だけを動かす私だった。
ぼそっとした低い声が聴こえ、佐瀬さんが踵を返して歩き出した。
私は返す言葉すら浮かばずに、黙って後ろを追いかける。
一歩ずつ。かかとを踏み出すごとに、徐々に頭の中が冷えてくると。比例して、どんどん気持ちが奈落の底へと落ちていく。
あんな。子供の駄々を聴かされて。・・・呆れない人間がいるでしょうか。
幼稚園児が大好きな先生にかまってもらえなくて、拗ねて困らせたようなものです。22歳の大人の所業とは思えない愚行です。もういっそ、穴を掘って二度と地上には顔を出さない方がいいに決まってます・・・・・・。
情けないやら自分を赦せないやら、自己嫌悪でまた泣きたくなった。
鼻の奥がつんとするのを必死に堪え、俯き加減にきゅっと唇を引き結ぶ。
出来るものなら、放っておいて欲しかった。
どんなに頑張っても何も無かったようには笑えないし、佐瀬さんに居心地の悪い思いをさせたくもない。今すぐに回れ右をして、駅に向かって走り出したい衝動を、寸でのところで思い留まっているのだから。
それでも。私の身辺警護で報酬を得るのが、彼の仕事。妨げる真似だけはしたくない。その一心で鉛よりも重たい心と躰を引き摺り、機械のように足だけを動かす私だった。