恋は、秘密主義につき。
水族館を後にして黄昏の海沿いをドライブし、小洒落たダイニングレストランで夕食をご馳走になった。
その頃には会話もスムーズになってきていて、出がけの時より打ち解けた雰囲気ではあったと思う。

9時前に私の家に到着すると、玄関先まで送ってくれた征士君はママにもきちんと挨拶を言って帰って行った。もちろん、『次』の約束も忘れずに。

「美玲、どうだったの?、征士君、どうだったの~っ?」

マスカラばっちりの瞳を、溢れんばかりの期待で煌めかせるママ。

「好い人だと思います」

言葉を選んで感想を伝える。

「そうじゃなくて、ほら? 共通の趣味とか好きな物とか、ちゃあんとリサーチしたんでしょうね? お誕生日はいつ? 向こうのご家族とお食事会をした方がいいと思うのよ?」

「ああ・・・そう言えば訊かれなかったので。訊いてませんでした」

「もう美玲ったら! そういうところをパパに似なくてもいいんですよ」

ママは大仰な溜め息を漏らしてリビングに戻り、私も2階の自分の部屋に上がった。

丈の長いチュニックTシャツとレギンスに着替えて、ベッドの上にクッションを抱え込み、俯せに寝転がる。
気が置けない人とってわけでも無かったから少し疲れた。深く息を逃すと、スマートフォンをチェック。画面を縦に埋めるバナー。ラインも幾つかあった。
会員登録したサイトからのお知らせだったり、セール情報だったり。開いている間にも通知音がして、続けてタップ。今度のは、連絡先を交換した征士君からだった。
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