恋は、秘密主義につき。
「あのひとに近付きたいってキモチ、変わってない?」

ふんわりカールの可愛らしい顔はいつになく真剣で。
私は一瞬言葉に詰まり、戸惑いながらも小さく頷き返しました。

「でもね。美玲と佐瀬サンは、たとえば海の魚と川の魚かも知れない。・・・分かる?」

海水魚と淡水魚。意味を頭の中で巡らせる。
違う水では生きられない。同じ世界にいられない。・・・そういうことなら。
彼(彼女)の言うことが朧げに分かったような気がしたのは。あの男の子達に垣間見せた、佐瀬さんの姿を思い出したから。

鏡に映る一実ちゃんと目が合って、私は微かに頷いた。
それでも同じ『魚』なら。一緒にいられる方法はないでしょうか。
縋りたい思いを過ぎらせて。

「だからあたしは、無責任に美玲の背中を押すのはやめる」

儚げな微笑みが浮かんだその顔が、こっちを向いたのに合わせて私もぎこちなく隣りを見上げた。

「美玲が自分でそう決めて、ゼッタイ諦めないって言うなら。全力で味方になってあげる。死ぬ気で助けてあげるから、ちゃんと頼ってね?」

きっぱりと言い切った彼(彼女)の瞳は、とても強かで。
張り詰めていたものが解けたみたいに。涙が零れ落ちていました。
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