恋は、秘密主義につき。
「一実ちゃんは怖くないですか・・・? ぶつかって、もし嫌われたらとか。傍にいられなくなったら、・・・とか」
思わずそんな弱音までが口から洩れ出てしまって。
本当に佐瀬さんのことになると、今まで何も考えなくても歩けていたのが突然、歩き方さえ覚束なくなったみたいに。
何かを間違うのが怖くて、その一歩を尻込みしたくなってしまう。
・・・・・・そう思うのは、弱い臆病者だからでしょうか。
情けない顔になっている私の両頬を、男の子にしては華奢な手がきゅっと包み込んで捕まえる。そして顔を寄せ、額に額をコツンとくっ付けた。
「怖くない恋なんかないよ。逃げちゃう方が楽なコトばっかりだし。でもね、怖がってナニもしなかったら一生後悔するよ。美玲には、絶対にそれだけはして欲しくないから」
言い聞かせるような一実ちゃんの言葉が、不意に胸の中で小さく弾けた。
「恋愛迷子の美玲に1コだけ、教えてあげる。その人のコトだけで、頭ん中がいっぱいになっちゃうのはネ」
もうとっくに、好きになってるからだよ。
一実ちゃんのやけに大人びた男の子口調が、すとんと。胸の中に落ちて。
呆気なくしっくりと、そこに嵌まり込んだ。
佐瀬さんが好きだから。
こんなにも振り向いて欲しいって。
子供じみた願いだと分かっているのに、止められないほど。
好きになっていた・・・?
いつから。
いつの間にか。気が付いたら。
一瞬、呑んだ呼吸を。
深く胸の内で、ゆるゆると逃していく。
どこか。絶望と希望が綯い交ぜになったような。
途方に暮れるような、それでいて。
辿り着けた安堵のような、深い吐息を。
足許を見つめれば、引かれた一線が確かにあって。
私は佇んだまま、たどたどしく指先を伸ばしていく。
その向こうへと。
思わずそんな弱音までが口から洩れ出てしまって。
本当に佐瀬さんのことになると、今まで何も考えなくても歩けていたのが突然、歩き方さえ覚束なくなったみたいに。
何かを間違うのが怖くて、その一歩を尻込みしたくなってしまう。
・・・・・・そう思うのは、弱い臆病者だからでしょうか。
情けない顔になっている私の両頬を、男の子にしては華奢な手がきゅっと包み込んで捕まえる。そして顔を寄せ、額に額をコツンとくっ付けた。
「怖くない恋なんかないよ。逃げちゃう方が楽なコトばっかりだし。でもね、怖がってナニもしなかったら一生後悔するよ。美玲には、絶対にそれだけはして欲しくないから」
言い聞かせるような一実ちゃんの言葉が、不意に胸の中で小さく弾けた。
「恋愛迷子の美玲に1コだけ、教えてあげる。その人のコトだけで、頭ん中がいっぱいになっちゃうのはネ」
もうとっくに、好きになってるからだよ。
一実ちゃんのやけに大人びた男の子口調が、すとんと。胸の中に落ちて。
呆気なくしっくりと、そこに嵌まり込んだ。
佐瀬さんが好きだから。
こんなにも振り向いて欲しいって。
子供じみた願いだと分かっているのに、止められないほど。
好きになっていた・・・?
いつから。
いつの間にか。気が付いたら。
一瞬、呑んだ呼吸を。
深く胸の内で、ゆるゆると逃していく。
どこか。絶望と希望が綯い交ぜになったような。
途方に暮れるような、それでいて。
辿り着けた安堵のような、深い吐息を。
足許を見つめれば、引かれた一線が確かにあって。
私は佇んだまま、たどたどしく指先を伸ばしていく。
その向こうへと。