恋は、秘密主義につき。
5-1
『もちろん来週は、会社が潰れるって言われても休むよ』

誕生日の26日は平日で。前倒しの週末に会えないかを切り出せば、スマートフォンの向こうから、征士君の涼しげな笑顔が手に取るように伝わってきました。

『おかげで今までで一番、仕事が頑張れたかもな』

ゴールデンウィーク以来、お休みが合わない代わりに欠かさず電話をくれる彼。出張先からだったり休憩中だったり、短い時間でも合い間を見繕っては。
今も夜の11時を過ぎて、私はすっかり後は寝るだけなのに。征士君はクライアントとの打ち合わせから帰ってきたばかりだと、それでも疲れたとは一言だって漏らしたりしないのです。

「無理はだめですよ? 体が壊れたら元も子もなくなっちゃいます。日曜なのに明日もお仕事なんですよね? 早く休んでください」

『レイちゃんの声が俺の栄養剤代わりだから、大丈夫』

やっぱりオーバーワークは心配になって、本心からそう言うと。
見えていないけれど、甘く笑まれた気配がしました。
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