恋は、秘密主義につき。
「たとえ愁兄さまが、私に征士君との結婚を望んだとしたって! この気持ちが嘘になったりはしませんっっ。佐瀬さんには子供の恋愛ごっこに見えているかも知れませんけどっ、私にとっては、生まれて初めて自分で見つけた、たった一つの本物の恋なんです・・・っ。私が嫌いならそう言ってちゃんと振ってください! そうしたらちゃんと明日からまた、普通に笑えるように頑張りますから・・・っっ」

最後の方は涙の方が先に落ちてしまって。声が詰まり、小さく嗚咽していました。

自分の気持ちを勝手に押し付けて、勝手に泣いて。
どれだけ子供なんだろうと、泣きながら自分に絶望しました。
呆れて、迷惑だと冷たく見捨ててくれたらいいと思いました。

こんな風に佐瀬さんを困らせて馬鹿です、私・・・・・・。
本当に大バカです・・・・・・・・・。


躰を竦めて、両手で俯いた顔を覆いながら。力なく声を震わせた。

「・・・・・・すみません、佐瀬さん・・・。私を一人にして行ってください・・・。
まだ明るいですし、・・・大丈夫です。落ち着いたら、帰りますから・・・・・・」

強がりでもなく本心からでした。
ここで泣ききって、全部流し尽くして。

心の中を空っぽにしたら。
仕舞ってしまいましょう。
鍵をかけて大切に。

そっと、・・・そっと。奥底に眠らせて。
これで終わりにします。
きっともう、他の誰にも恋はできないから。




貴方以外には。
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