恋は、秘密主義につき。
目を細めた佐瀬さんは。何も言わず、顎に手をかけたまま私の顔を自分に引き寄せ、また唇を塞いだ。
離れて角度を変えては浅く深く、さっきとは違う、強かなのにしなやかなキス。

「・・・ッ・・・、ぅん・・・っ」

有無を言わせずに征服されたような感じは一切なくて。
私を誘って、引き込んで、どんどん絡め取っていくみたいな。

心臓がきゅうっと鳴いて、奥から何かが昂ってくる。
喘ぎたくて、でも離してもらえずに呻くように声がくぐもる。
躰が熱くなって、頭の芯が溶かされて、膝からもう崩れ落ちそうになって。

「はぁっ・・・っっ」

力が抜けてぐにゃりと座り込みそうになった私を、腰に回した腕で力強く支え、胸元に抱き込む佐瀬さん。

「このぐらいで根を上げられてもねぇ」

どこか不敵そうに笑まれた気配。

「本番はこんなモンじゃねーぞ?」

「あの、えっと、・・・きゃっっ」

いきなり視界が回転したかと思えば、躰が宙に浮いてお姫様抱きされていました。

「軽いな、お嬢ちゃん。女はもうちょっと肉付きがあった方がイイ」

そのままリビングから繋がる奥へと躊躇なく。
カーテンが引かれた薄明るい部屋には、壁際にベッドが一つだけ。その上に横たえられ、心臓が有り得ないくらいに大きく波打った。
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