恋は、秘密主義につき。
「やめとけ・・・。オレに抱き潰されるのがオチだぞ?」

冷たくも温かくもない、いつもの声で宥めるように。

「それでもいいです、から・・・っ」

「・・・オマエね」

呆れた気配がしても、私はすがって離れませんでした。
どうしても『約束』が欲しかった。
不確かな明日の先に繋がる、確かなものが。

何も言ってもらえないなら、せめて・・・!


ややあって、「好きにしな」と溜め息雑じりに返った。

子供のわがままを仕方なく聞いてくれる、大人の佐瀬さん。
貴方はやっぱり、最後に突き放したりできない優しい人だから。

「・・・・・・・・・ごめんなさい・・・」

知っていて困らせた。
心臓をきゅっと握り込んだみたいに胸が痛んで、声が微かに震えた。

「・・・謝ンな。その代わり、聞けねぇ時は、お嬢ちゃんが泣こうが喚こうが聞かねーから憶えとけ?」

言葉は厳しかったけれど、それだけじゃない気がしておずおずと顔を上げる。
精悍な眼差しが私を突き通し、深く見つめられていました。

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