恋は、秘密主義につき。
バスソルトを溶かしたお湯にゆっくりと浸かり。肌のお手入れも済ませて、スタンドライトだけの薄明かりの中、ベッドの上に疲労感の漂う躰を沈めた。

手にはスマートフォン。お風呂に入る前に届いていた征士君からのラインを開く。
明日の迎えに来る時間と、『本当は今からでも会いたい』という真っ直ぐなメッセージ。

返信が遅くなったお詫びと、『安全運転で来てくださいね』と当たり障りのない返信をすれば、すぐに既読になりました。そこから、おやすみなさいを言い合うまで少しやり取りをして。

時計の表示を見ると0時過ぎ。兄さまに直接電話をかけるか、ラインにするかをしばらく迷った挙句。意を決してタップする。いつもの私なら、そうするはずだと。

『・・・美玲? なんだかずい分と久しぶりに声を聴いた気がするね』

向こうから聴こえてきた、大好きな愁兄さまの柔らかな声。

『嬉しくて、今日はよく眠れそうだよ』

「あまり兄さまに甘えてしまうのも悪い気がして、遠慮してました」

クスリと笑んでそんな風に言ってみせると、さらにクスクス笑いが返った。

『それが僕の生き甲斐なのに、取り上げないでくれないかな。美玲はそんなことは考えずに、甘えていいんだよ。僕は美玲の為にいるんだから』
< 175 / 367 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop