恋は、秘密主義につき。
運転をしながら、尽きない話題で私を退屈させない彼。
信号待ちのたびに甘やかな眼差しが傾く。

「出張がもう少し減ってくれれば、もっとレイちゃんと会えるのにな」

「お仕事は仕方がありませんから・・・」

「少しは寂しいって思ってくれてる? 俺と会えない間」

クスリとされ、少し言葉に迷った。

「顔が見えないと心配でしたけど・・・。忙しくて体は大丈夫かなとか」

誤魔化しではない本心を口にして微笑み返す。

「変わらないみたいで安心しました」

「仕事が土日に重なっても、その分は振替できちんと休んでるしね。オーバーワークにはなってないから大丈夫」

「本当に無理だけはしないで、頑張ってくださいね」

ありきたりでも。願うように気持ちを込めたエール。

「ん。ありがとな」

征士君は涼やかに笑い、絡めたままの指にきゅっと力を籠めて、青に変わった交差点から車を発進させた。


『離さない』

声にならない言葉を聴いた気がして。


切なく苛まれる私がいました。・・・掌から伝わる、彼の揺るぎない熱情に。


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