恋は、秘密主義につき。
それから1時間とかからないで、シネコンを併設した郊外の大きなショッピングモールに到着しました。
普段の土曜日でも5階建ての立体駐車場はすでに、3階まで満車状態。
4階でスマートに車を駐車させ、降りた後も征士君はすぐに私の手を取り指を絡めた。

今日は、7分袖のシフォンブラウスにフレアラインのジャンパースカート、足許はスリングバックのパンプス。髪はハーフアップにして、カジュアルすぎないコーディネイト。
隣りにいる私が彼に不釣り合いすぎて迷惑にならないよう、心掛けたつもりです。


「観たい映画、俺の好みだけどいい?」

エレベーターに乗り込んで視線を傾げる彼。
頷くと、細面の甘い顔立ちに、誰が見ても魅惑的な笑みを覗かせました。

背もあってスタイルも良くて。歩けば、すれ違う人の視線が少なからず彼を捉えて過ぎていきます。当人は前を向いているか私に向いているかで、全く気にならない様子ですけれど。

「上映時間まであと30分くらいかな。中途半端な時間でごめん、レイちゃん。お昼はフードコートもレストランも混むから、映画観て少しずらそうと思ってね」

「大丈夫ですよ。そんなにお腹も空いてないですし」

「ほら、観ながら二人でポップコーン摘まむってやつ、アレやってみたかったんだ。お昼食べちゃったら出来ないだろ?」 

クスクス笑う横顔は少し無邪気で。可愛いところもあるんだなと、私も笑みを零す。
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