恋は、秘密主義につき。
率直に好意を隠しもしない彼との温度差を縮めていけるのか、戸惑いはありました。
でも兄さまやヨウ君達が焦らなくていいと言ってくれたとおりに、ゆっくり自分の気持ちを進めていけばいいんだと。

「・・・私にはもったいないくらい本当に素敵な男の人になっていて。征士君と一緒にいるのは、居心地がよくて・・・楽しかったんです。・・・結婚も前向きに考えるつもりでいました。大好きだった幼馴染となら・・・って。そのうちに恋人の好きに変わっていくのかなって、・・・思ってました」

一瞬、奥歯をきゅっと噛みしめ。胸元に埋まりながら、最後まで言い切る覚悟を決める。

「・・・でも。そうじゃないって気が付いてしまったんです。誰かを本当に好きになる気持ちは、そんな風に流されていくものじゃないってことも、・・・もっと苦しくて痛い思いを沢山するんだってことも。だから・・・」

「・・・俺は違う?」

「っ、・・・ごめんなさい・・・!」

言おうとしたことを先に征士君が低く口にした。
何度あやまっても、彼を傷付けているだけです。それでも。他に言葉がないのです。

「好きな人がいるの?」

畳みかけられて。
咄嗟に否定も肯定も出来なかった私を。
抱きすくめたまま征士君は。

黙って立ち尽くしていました。
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