恋は、秘密主義につき。
家まで送るのを当たり前でいてくれた征士君でしたけど。
申し訳なさと居たたまれなさで、作り笑いさえぎこちないのを見兼ねてか、最寄り駅まで送ってほしいという私の申し出を最後には承知してくれました。

静かな振動で、闇色に包まれた街中を走り抜けていく車。
小さく助手席に収まり、どうしても口が重くなってしまう私を逆に彼が気遣って、さり気なく話しかけてくれる。
いつもと変わらない柔らかさを向けてくれているのに。硬さが抜けきらない曖昧な笑みが浮かぶばかりで。
早く駅に着かないかと身勝手な思いでいっぱいでした。


「・・・・・・保科さんは知ってるの?」

会話が途切れ、ボリュームを絞ったBGMが流れるだけの車内に征士君の声がやけに響いて聴こえた。

「レイちゃんが誰を好きなのか」
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