恋は、秘密主義につき。
まさかそこに触れられるとは思わず、ウィンドゥの外に泳がせていた目を見張って。隣りを振り返る。
一瞬言葉に詰まったものの、正直に答えました。

「兄さまには・・・まだ何も話せてないんです・・・」

「・・・そっか」

私の誕生日までは許婚でいると約束したのだから、もちろんお祖父さまにも、パパやママにも打ち明けるのはそれからということ。

征士君は考え込むように少し黙り込むと、真っ直ぐ前を向いたままでまた口を開く。

「なら条件は五分だよな。・・・勝負が決まったわけじゃない」

自分自身に言い聞かせているようにも聴こえ、私は口を噤んでじっと耳を傾けていました。

「仕事でもね。土壇場でクライアントにひっくり返されることなんてザラなんだ。『へこんで泣いてるヒマがあったら、最後の一滴まで脳ミソ絞り出せ』・・・って。先輩にさんざん叩き込まれてきたのが、染みついてるのかもな」

言った彼は、ふっと横目を流して淡く笑んだのでした。
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