恋は、秘密主義につき。
使い切りの美容液で肌のお手入れまで済ませ、もやっとした気持ちを強制的に切り替えてフロアに繋がるドアのノブを回す。
煌々と明るかった室内はいつの間にか、ダウンライトの仄かな灯りが頼りの影の世界に一転して。
ベッド脇のスタンドライトがぼんやりと佐瀬さんの上半身を浮かび上がらせているのを、足が勝手に引き寄せられていきました。

「佐瀬さん。・・・ありがとうございます、いろいろ揃えていただいて」

脚の付け根が隠れるか隠れないかの丈のTシャツ一枚にスリッパ、という格好で前に立った私を。一糸まとわない姿でベッドの縁に腰掛け、スマートフォンを手にしていた彼が気怠そうに見上げた。

「・・・余裕だな」

「え?」

「何でもねぇよ。・・・来い」

「あ・・・っ」

手首を取られてそのままベッドに倒れ込む。
仰向けに組み敷かれ、真上に佐瀬さんの顔があった。
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