恋は、秘密主義につき。
「・・・・・・そろそろ起きろ、お嬢ちゃん」

耳元でいつもの億劫そうな声がはっきりと聴こえ、自分がどこにいるのかを惑って混乱した私。

「・・・っ、あ・・・、エ・・・?」

「寝相は悪くねーが、寝起きはコドモか」

ククッと人の悪そうな笑いがくぐもったと思えば、腕枕になっていた彼の腕が私を引き寄せ、簡単に向かい合わせにしてしまう。
口角を上げた佐瀬さんの不敵そうな顔があって、一気に羞恥心が臨界点を突破しました。
好きな人に寝ぼけ顔を見られるなんて・・・!

「お、・・・はようござい、ます」

到底まともに目を合わせることなんて出来ません。次第に鮮明な記憶まで蘇ってきます。

特別な夜だった。・・・と思うのは私だけなんでしょうか。
佐瀬さんが何も変わらない様子なのを、胸の奥がチクっと痛む。

「シャワー浴びて、メシでも食うか」

怠そうに上半身を起こした彼に続いて、起き上がろうとした瞬間。眩暈がして、平衡感覚が取れなくなった。

「あー・・・、動くなよ」

スプリングを大きく軋ませた佐瀬さんがベッドを降りた気配。
すぐに戻り、崩れ落ちた私を胸元に抱きかかえると、口移しで冷たい水を何度も喉に流しこんでくれる。
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