恋は、秘密主義につき。
一実ちゃんの言葉がひとつひとつ、私の中に溶けていく。

佐瀬さんが私をどう思って、なにを心に決めてくれているのか。・・・まだ征士君とのケジメをはっきりとつけていない自分に確かめる資格があるかを、惑っていたのも確かです。

なにより愁兄さまやお祖父さまに、好きになった人を分かってもらうのは私の問題で、自分が果たさなければいけない責任だと思っていました。

二人で別け合えないなら愛じゃない。
言われてどこか。それまで見えていた世界の輪郭が、不意に鮮明になったような。気がした。
『欲しいなら、差し出せ』
佐瀬さんがくれたあの意味が。・・・もしそうだったなら。

「一実ちゃん、・・・私。もっと佐瀬さんに甘えてしまっても、いいんでしょうか」

なんだか少し泣きそうになったのを堪えながら、小さく笑って見せる。

「甘えるってね、自分も相手も信じられるからできるの」

片目を瞑った一実ちゃんは、大人びた表情を覗かせた。

「ワガママだから甘えるんじゃないのよ。甘えたくらいじゃ何も壊れない自信があるから、甘えられるの」





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