恋は、秘密主義につき。
週の始まりで午後からの来客も多かったけれど、トラブルもなく一日の仕事を締め括れた。
路線が違う一実ちゃんと別れ、心を逸らせて電車に揺られる。
制服姿の学生や、自分と同じに会社帰りらしい乗客で混み合う車内。熱気と冷房の風が入り雑じった、少し居心地の悪い空気に包まれながら。視線を落とし気味に、あと二つ、と駅を数える。
自動扉が開いた瞬間、一斉にホームに降り立つ人波に流されるように階段を昇り、いつもの待ち合わせ場所へと脚が正直に急いでしまう。
ロータリーの外れに停車している白い車が視界に映ると、笑みがほころびそうになって慌てて口許を引き締めた。にやけ顔で歩く、おかしな人に思われるところでした。
「お待たせしました」
助手席に乗り込んだら、佐瀬さんの横顔にまずホッとして。
こっちに流された視線に胸がきゅっとする。
今はもう、この気怠い雰囲気に安心してしまうほど貴方が馴染んでいる。
頭に乗せられた掌の温もり。顔が寄せられたのを無意識に目を瞑る。
無口なキスはすぐに離れ、「・・・行くぞ」と佐瀬さんはシフトをドライブに入れ替えたのでした。
路線が違う一実ちゃんと別れ、心を逸らせて電車に揺られる。
制服姿の学生や、自分と同じに会社帰りらしい乗客で混み合う車内。熱気と冷房の風が入り雑じった、少し居心地の悪い空気に包まれながら。視線を落とし気味に、あと二つ、と駅を数える。
自動扉が開いた瞬間、一斉にホームに降り立つ人波に流されるように階段を昇り、いつもの待ち合わせ場所へと脚が正直に急いでしまう。
ロータリーの外れに停車している白い車が視界に映ると、笑みがほころびそうになって慌てて口許を引き締めた。にやけ顔で歩く、おかしな人に思われるところでした。
「お待たせしました」
助手席に乗り込んだら、佐瀬さんの横顔にまずホッとして。
こっちに流された視線に胸がきゅっとする。
今はもう、この気怠い雰囲気に安心してしまうほど貴方が馴染んでいる。
頭に乗せられた掌の温もり。顔が寄せられたのを無意識に目を瞑る。
無口なキスはすぐに離れ、「・・・行くぞ」と佐瀬さんはシフトをドライブに入れ替えたのでした。