恋は、秘密主義につき。
ずいぶんと陽は延び、まだ明るさを残している日暮れ時。
そんなことにも構わず佐瀬さんは、公園脇の人けのない通りに車を停め、私の頭の後ろをやんわり押さえ込んで、ひとしきり貪るようなキスを繋げた。
それから優しく啄まれたり、舌でなぞられて遊ばれる。
ベッドでされる感覚と雑ざって、躰の芯ごとまた熱く熔かされそうになった。

「・・・・・・来るか」

妖しい声。
薄目を開ければ、口角を上げた貴方が目を細めてどこか満足そうに。

「・・・今日は帰らないと・・・」

なけなしの理性を総動員させて、弱弱しく首を振る。

「つれないねぇ」

顎の下を掴まえられて耳元に低く囁かれた時。全身の細胞が震えて、きゅう、と切ない鳴き声を上げた。

私の躰には。死ぬまで消えない、貴方の毒が回っているのかもしれません。
甘苦い痺れで言うことを聞かなくなってしまうんですから。

「・・・ンな、イジメ甲斐のあるカオで煽るなよ」

苦そうな溜め息をひとつ漏らした佐瀬さんが、うなじにかかる私の髪を払い除け顔を埋めた刹那。そこをきつく吸われたのが分かった。それも立て続けに3回。

「あっ、佐瀬、さん・・・っ」

「予約済のハンコだとでも思っとけ」

離れた貴方はわざと素っ気なく、シートに体勢を戻した。
有無を言わせない強引なところもあるけれど、無理強いはしない。・・・けして独りよがりじゃない、優しいひと。
そのままエンジンのスタートボタンに手が伸ばされたのを、私は大事なことを思い出し、咄嗟に引き留めていました。
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