恋は、秘密主義につき。
「そうだね」と短く答えた兄さまは、コーヒーカップに口を付けたあと、ガラス張りの向こうにふと視線を流した。

大きな窓は、目の高さくらいまでが摺りガラスになっていて、その上の、切り取られたみたいな空だけが見えていた。薄く雲を引いているけれど、春らしい青天。

「・・・美玲の相手としては悪くないと思っているよ、僕は」

「半分は認めてないように聴こえる」

ヒサ君が、ぼそっと呟く。

「大事な美玲を託すに値するかは、別の話だからね」

まだ外の方を向いていたから、表情は見えなかった。
ほんの少し声が冷ややかに聴こえたのは。私の気のせいだったんでしょうか・・・?

「愁一さんを敵に回したら、さぞかし怖いコトになるだろうねー」

他人事のように面白がるヨウ君。

「決めるのはレイなんだからさ。好きなようにやってみなよ」

わざと気楽そうに背中を押してくれた。

「あんまり難しく考えんな。・・・嫌なら止めていいんだからな」

勝気そうな印象の顔で、言い方は素気なくても。ヒサ君が私を心配してくれているのも伝わってくる。
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