恋は、秘密主義につき。
「・・・好きにすりゃいい」

「え・・・?」

そう呆気なく返されて拍子抜け・・・と言うよりも。混乱していました。

『どうでもいい』?
『勝手にすればいい』?
『思う通りにすればいい』?

受け取り方で意味合いが全く違ってきて、頭の中がまとまらないまま要領を得ない単語の羅列が口から洩れ出た。

「あの、でも、そうしたら兄さまが。・・・佐瀬さんも、あの」

最後には目までが明後日の方向に泳いでしまう。
面倒で突き放されたのかもしれない。
暗い不安に覆われて、相当に情けない顔をしていたのか、「そうじゃねーよ」と気怠い溜め息が聴こえた。

俯き加減だった顎の下に手がかかり、ぐっと上を向かされる。
冷たくも温かくもない闇色の眸がじっと私を見据えていました。

「・・・くれてやったモンをどう使おうと、お嬢ちゃんの自由だろーが。文句なんざねーよ」

「佐瀬さん・・・・・・」

それはとても貴方らしい答え方で。

「惚れてもねぇ女にくれてやるホド、オレも酔狂じゃねーんだわ。・・・分かったら大事に使え?」

不敵そうに口角を上げた、少し人が悪そうな顔。・・・でも眼差しは和らいでいて。
わざと意地悪に見せるのは照れ隠しなのかもしれません。

さらりと、でも、いちばん待ち望んでいた告白に胸が詰まり、今にも泣きそうなのを。そのまま佐瀬さんが寄ってきて唇が重なった。
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