恋は、秘密主義につき。
「あっ、あの初めまして、楠田美玲です・・・っ。佐瀬さんにはいつも迷惑ばかりかけてしまうのに優しくて、本当に私にはもったいないくらいなんです・・・!」

佐瀬さんの親しい人っていうだけで、緊張が倍増してしまって。訊かれてもいないのに口からポロポロ飛び出していました。

「あらあら、惚れられてるわねぇ佐瀬は。気に入ったわ、美玲ちゃん」

朗らかにコロコロと笑い声を立てる千里さん。

「昔の悪い癖が出たら、あたしがお仕置きしてあげるから遠慮なく言ってちょうだい」

「わるい、くせ?」

小首を傾げてオウム返しに。

「女泣かせっていう悪い癖は治ったんでしょうね?」

「カンベンしてくれ、姐さん」

お通しの小鉢を並べてくれた千里さんに意地悪く言われて、苦虫を噛み潰したような顔の佐瀬さんが溜め息を吐く。

「今はコイツだけですよ」

「あたしの前に連れてきたからには、半端な真似は赦さないからね」

「・・・承知してます」

千里さんと佐瀬さんの間に一瞬。ピンと糸を張ったみたいな気配が漂い。
こっちに視線を傾けた佐瀬さんは少し口角を上げ、私の頭を黙って撫でた。
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