恋は、秘密主義につき。
思わず口をついて出てしまい、この場で聴かせることでもなかったと慌てて言い繕いました。

「すみません、変なこと言ってしまいました・・・っ。あのつまり、私の方が佐瀬さんを好きですから」

大丈夫です。と、やっぱり少しおかしい日本語になりかけましたが、いきなり佐瀬さんに引き寄せられたので最後まで言えずに。

「あー・・・いーから、もう黙ってな」

低い呟き。後ろ頭を掴まえられ、彼の胸元に顔を押し付けている格好で身動きが取れません。
頭上でまた溜め息が漏れた気配に、余計なことを言って呆れさせてしまったと情けなくなって泣きそうでした。

「姐さん」

冷たくも温かくもないいつものトーンが私の耳に届く。

「・・・今のオレは、女に命くれてやるくらいが関の山です」
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