恋は、秘密主義につき。
中等部に上がり家庭教師をしてもらうようになって殊さら、愁兄さまには包み隠さず何でも打ち明けてきた。
思春期の登竜門とでも言うか、楠田の一族という理由で一部の女子に意地悪ぽい仕打ちをされたことや、見知らない先輩男子から告白されたこと。兄さまからしたらお子様な悩みだったと思うのに、微笑みながらいつも真剣に耳を傾けてくれた。

恋愛は興味がなかったわけではないけれど、心を動かされた相手もいなかったから。短大生になって、兄さまが紹介してくれた水野さんとお付き合いしたのが初めてだった。
6歳年上で、とてもオトナの人に見えて。ファーストキスも、それ以上も。
優しく大事にくれたのを思い出す。あの時も兄さまには、全てを包み隠さず話してましたっけ・・・。

「圭太さんの時も、そうでしたね」

私が小さく笑みを零すと。

「美玲のことを一番に知っていたいんだよ、僕は」

まるで、愛を囁かれたのかと思ってしまいそうな妖艶な微笑みで返されて。
思わず心臓が止まりそうになりました。
< 26 / 367 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop