恋は、秘密主義につき。
オフィスは、広いワンフロアを各部署ごとにパーティションで仕切ってあるだけで、言い方を変えれば『開かれたオフィス』です。こうして筒抜けにすることで他人の目も気になり、セクハラやパワハラへの抑止力が働くのだとか。

入り口は２カ所ありますがどっちも扉が取り払われていて、いきなり支社長が前触れなく現れたりもするそうですし、いつ誰が入ってくるかも分かりません。さぼっていたら丸見えですから、社員は自分で自分の襟を正す姿勢が自然と身につくのかもしれません。


オフィスの向かい側に設置された、個室タイプのミーティングルーム。NO.３と印字されたプレートが付けられたドアをノックする。

「失礼します」

４人掛けのテーブルとイスに、電話台が置かれただけのシンプルなスペースは手狭ですけど、応接室としても使うこともあるので色調は明るめです。色違いのイスや観葉植物の緑は、閉鎖された空間の雰囲気を和らげる効果があるのかもしれません。

「座りなさい、美玲」

奥のイスに座って銀縁眼鏡のブリッジに手をやり、キリッとした顔でたぁ君が私を見上げていました。
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