恋は、秘密主義につき。
「ありがとうございます。私もスーツの征士君は初めてで、かっこいいって思いましたよ」

あの日以来の再会。気まずさはなく、目を見交わして笑みをこぼし合う。

「しばらく楠田課長の許でお世話になるけど、よろしくな」

「はい。こちらこそ宜しくお願いします」

「・・・それとレイちゃん。今日、仕事が終わったら少し会えないかな」

ふと真剣な表情になって征士君が言った。

「話しておきたいことがあるんだ」

歪みも澱みもない一直線の眼差しを受け止め、二人で会うことに躊躇いが沸くこともなかった。
頷いて見せれば、「待ち合わせを後でライン入れとく」と、目尻を下げて安堵したように征士君は小さく笑った。 
 
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