恋は、秘密主義につき。
「征士君の気持ちは、何であっても誠実に受け止めたいって思ってます。でも気持ちが動くことはないですよ、佐瀬さん以外に」

少し横顔を傾けて微笑んで見せれば。

「言うようになったわねー、恋愛中学生だった美玲が」

おどけた風にクスクスと返ってきました。

「あっという間にオトナの階段のぼってきちゃうんだから。もちろん、あたしを追い抜かすにはまだまだだけど?」


いつも相談役ばかりの一実ちゃんは、自分のことはあまり進んで話したりしない方です。話の流れで訊ねても、どことなくぼかした返事が多いですし、私もあれこれ詮索しませんけれど。・・・そういうところは佐瀬さんと似てると思います。

前に聞いたときは、食べちゃいたいくらい大好きな『彼女』にゾッコンだとか。いっそ閉じ込めて、自分だけで可愛がりたいのを我慢してるって言ってましたっけ。

一実ちゃんに溺愛されてる彼女さんは、幸せだろうなって思います。女子力が高くて愛くるしくて、お姉さんにもお兄さんにもなってくれて。
もし結婚するとなったら、どちらもウエディングドレスを着るんでしょうか・・・? それはそれで一実ちゃんらしいかもしれません。
 
いつか一実ちゃんの大切なひとにも会わせてくれたら嬉しいと、そっと笑みをほころばせた私です。

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