恋は、秘密主義につき。
8-3
征士君からのメッセージには、18時に会社の最寄り駅の改札前で待っている、とあった。
退社時間になって制服から着替え、佐瀬さんにもラインで知らせておく。

『終わったら電話しろ』

短い返事がすぐに返って、心地よい安心感に包まれる気がした。

貴方はいつでも私のそばにいてくれる。
それをそっと掌に握りこみ、一実ちゃんに断って先に会社を後にした。



同じような会社帰りのOLや、サラリーマンが続々と吸い込まれていく改札口。
少し離れた広告案内板の前にすらりとした立ち姿を見つけて、小走りに駆け寄った。

「お待たせしました・・・っ」

「お疲れさま。ごめんな、いきなり付き合わせて」

向こうもすぐに気が付き、前に立った私に眉を下げ淡く笑む。

「大丈夫ですよ。気にしないでください」

「じゃあ取りあえず、レイちゃんの駅まで行こう。遅くなったら悪いから」

「え? でも、そうしたら征士君がすごく遠回りになっちゃいませんか?」

「今日は初日で打ち合わせばっかりだったし、少し体を動かしたい気分なんだ」

言って悪戯気味に笑った彼は。
私の手を取ると、呆気なく改札をくぐってしまったのでした。
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