恋は、秘密主義につき。
それから少しだけ、仲良しの一実ちゃんのことや、他の支社にはないご当地ルールの話もして。カップの中身が氷だけになった頃にお店を出ました。

「付き合ってくれて、ありがとう。タクシーで家まで送るよ」

言いながら私の手を引き、ロータリーのタクシー乗り場に向かって歩道を歩き始める征士君。

「あ、いえ・・・っ、大丈夫です!」

反射的に足を止めてしまった私を振り返って、訝しそうに。

「いくらそんなに遅い時間じゃないって言っても、一人で帰すわけにはいかないよ」

「その、迎えが来るんです」

「・・・迎えって?」

手が解かれ、彼の顔から表情が消えたように。見えました。
嘘は見抜かれてしまいそうで、真実(ほんとう)のことだけ取り繕う。

「愁兄さまが私を心配して、警護というか・・・送り迎えをしてくれる人を付けてくれたんです。もう近くまで来ているはずですし、征士君も遅くならないうちに帰ってください。私なら平気ですから」
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