恋は、秘密主義につき。
「じゃあ・・・また明日」

柔らかく弧を描く眼差し。

「はい。お気を付けて」

「こんど有沢さんと三人で飲みに行きたいね」

「・・・たまには、いいかもしれませんね」

ふたりで、と言われたら。YESとは答えられなかったでしょう。
あくまで職場の同僚として誘われたのだと受け止めて、小さく笑み返す。

「ん。それを楽しみに頑張るよ」

伸ばされた指先が私の頬にそっと触れてから、名残惜しそうに離れた。

「迎えの人を待たせちゃ悪いな。早く乗ってあげて、レイちゃん」

彼の視線が佐瀬さんの方に流れたのを、一瞬、わけもなく跳ね上がった鼓動。

「あ、はい・・・! おやすみなさい征士君」

「おやすみ」

優しい微笑みに見送られて、ガードレールの切れ間から回り込み、急ぎ足で車に駆け寄る。
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